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Kimono Silk Shirts /百美人と 麻雀牌文様

  • 執筆者の写真: rei
    rei
  • 6月5日
  • 読了時間: 3分

更新日:3 日前

“見えないところに美を置く”。

そんな日本人の美意識を、シャツという「見える服」に昇華した。

明治期の羽裏文様を再構築し2種類のシルクシャツを製作

  • 1つは、艶やかで緻密な女性たちの姿を描いた「百美人文様」

  • もう1つは、遊び心の奥に粋を宿す「麻雀牌文様」


いずれも、京都にて170年の歴史を誇る老舗染屋岡重が100年以上前に描き起こした柄。

当時、羽織の裏に忍ばせるために用いられたこれらの図案は、男たちの美学を映すモノであった。



◾️柄と生地に込められた背景

これらの文様は、岡重二代目・岡島重助氏のもと、蒐集された国内外の裂や図案から着想を得て描かれたもの。

まだ情報が乏しかった時代、文化や感性を取り入れ、それを羽裏という見えない場所に託す姿勢は、まさに“粋”の結晶だった。

  • 百美人文様:一人一人表情も装いも異なる女性たちが描かれた華やかな図案


  • 麻雀牌文様:牌・点棒・サイコロなどが散りばめられた、モダンなユーモアと構成美のある柄


これらの図案は、岡重所蔵の羽裏染見本帳に基づき、現代に復刻。



◾️生地は石川県・小松市にて製織されたシルク100%の「広中生地」

縦枠に菊の地紋を織り込んだジャガードで、視覚と触覚の両方から“深み”を感じる一枚。

しなやかで驚く程に軽く、自然な光沢とジャガードの菊文様は生地に奥行きを与える。

さらに「ボンソワーリ加工」を施すことで、ご家庭での洗濯を可能にしながら、

・風合いの維持

・形状の安定

・防しわ性

といった実用性も確保。

ボンソワーリとは、フランス語で「良きシルク」の意。

シルクの質感を損なわずに、耐久性と利便性を引き出す加工技術です。


◾️シャツとしての再構築

このシャツは、ieribの機能解釈と日常性を意識して設計。

  • 肩幅を広く取り、緩やかにドロップさせたシルエット


  • 生地を最大限活かす様、ステッチを少なく面で見せよりリラックス感を高める



タフすぎず、ドレスすぎない。

情緒と機能が交差する、ieribらしい“日常の特別”を纏った一着。


◾️ディテールに宿る、時の重み

前立てのボタンには、江戸時代後期に流通した銀貨「一朱銀」を使用。

アトリエにて一点ずつ穴を開け、シャツのパーツとして再構築。

一朱銀は、蕎麦25杯分に相当する価値を持った当時の計数貨幣。

今は使われなくなった通貨が、服の一部として再び命を得る。


◾️最後に

柄が語る文化と、素材が語る機能。

そして、シルエットが語る現代。

ieribの手で生まれ変わった百美人文様と麻雀牌文様のシルクシャツは、

ただ着飾るためではなく、纏う者の内側を映し出しそれでいてラフに毎日でも袖を通して欲しい、そんな1着に。


 
 
 

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